特別支援教育の教科書 「読むこと」に困難がある場合

教科用特定図書等

特別支援学校・学級では、基本的には通常の小中学校と同じ学年ごとの検定教科書で勉強します。しかしお子さんの状態によってはそれが難しいこともあります。その場合は担任の先生が毎年一人ひとりに合わせて 「教科書として使うことができる本」の中から教科書を選びます。

先日、県の総合教育センターで行われた特別支援学校・学級用の教科書展示会に行ってきました。教科書として使うことができる「検定教科書以外の本」を一堂に集めたもので、学校の先生が対象ですが、保護者など一般の人も見ることができます。

そこで展示されていたものには、視覚の問題で「読むこと」に困難があるお子さんのための教科書もありました。点字本や拡大本です。内容は基本的に検定教科書と同じです。

点字・拡大教科書など、特別な支援のために教科書代わりにする教材を「教科用特定図書等」といい、学校経由で注文して無償提供されます。通常学級に在籍しているお子さんでも希望すれば利用できます。点字・拡大教科書の提供を受けた場合は、通常の教科書はもらえません。

点字教科書

点字教科書は、視力による教育が困難または不可能なお子さんのために、原本となる検定教科書に必要最低限の変更を加えて点訳したものです。

点字

視覚特別支援学校の小学部・中学部で使う1種類については、文部科学省著作で国語・社会・算数(数学)・理科・英語・道徳の6教科が発行されてます。それ以外の科目や別の教科書会社のもの、高等部の教科書は、点字出版社やボランティア団体などが製作しています。

展示されていた点字教科書はがっしりした造りの本で紙の厚みもあり、重くて持ち運びが大変そう。文字情報だけでなく地図などの図や表も触ってわかるようになっていました。写真は説明文に置き換えるか省略されているようです。

拡大教科書

拡大教科書は、弱視(ロービジョン)のお子さんのために、原本教科書を拡大してレイアウトし直したものです。2008年に「教科書バリアフリー法」が施行され、現在ではほとんどの教科書会社が規格に沿った拡大版を発行しています。

拡大

弱視は一人ひとり見え方が違うため、オーダーメイドの教科書が必要なお子さんもいます。展示会では、ボランティアの方による手書き写本がありました。フェルトペンを使った大きな文字で、図表やイラストも全て拡大して配置されています。ページ数が増えるので、1冊の教科書が10冊近くになっていました。

音声教材

視覚障害だけでなく発達障害などでも「読むこと」に困難があって通常の教科書が使えない子がいます。「教科用特定図書等」にはさまざまな音声教材もあり、ディスレクシア(読み書き障害)やページがめくれないなど、多様なニーズに対応しています。

ディスレクシア

音声教材は検定教科書や拡大教科書と併用して利用するもので、家庭学習用に個人で申し込むこともできます。その子によって合う形式が違い、複数の音声教材を組み合わせて使うこともできます。年度途中から利用することも可能です。

「読むこと」に困難があれば、医師の診断書や障害者手帳がなくても使えます。今年7月に「教科書バリアフリー法」が改正され、障害があるお子さんだけでなく、外国人など日本語に通じていないお子さんも対象になりました。

音声教材
文部科学省「音声教材等についてのリーフレット」より画像作成

保護者の方へ

最近は、通常の教科書でもユニバーサルデザインで色やフォントなどの配慮がされています。また、2024年度から本格導入が始まった「デジタル教科書」には、読み上げや拡大縮小など音声教材と似たような機能があります。教科書会社のHPでサンプルが確認できます。

クラスの他のお子さんと同じ教科書が使えれば便利ですが、誰にでも見やすく使いやすいとは限りません。音声教材各種はこちらにサンプルがありますので、いろいろ試してみてはいかがでしょうか。

「教科用特定図書等」を希望する場合は、通っている学校や市の教育委員会に相談してみましょう。点字・拡大教科書は次年度以降の利用になります。特にボランティア団体に製作を依頼する場合は時間が掛かるので早めの相談が必要です。


知的障害があるお子さんの教科書、特別支援の教科書採択スケジュールはこちら。

投稿者:プー

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