特別支援の教科書
先日、県の総合教育センターで行われた特別支援学校・学級用の教科書展示会に行ってきました。教科書として使うことができる「検定教科書以外の本」を一堂に集めたもので、学校の先生が対象ですが、保護者など一般の人も見ることができます。
特別支援学校・学級でも、基本的には通常の小中学校と同じ学年ごとの検定教科書で勉強します。しかしお子さんの状態によってそれが難しい場合は、担任の先生が毎年一人ひとりに合わせて教科書を選びます。今回展示されていたのは3と4になります。
- その学年の検定教科書
- 下の学年の検定教科書
- 障害に合わせた文部科学省著作教科書
- 絵本などの一般図書(附則9条本)
特別支援教育用の「文部科学省著作教科書」には、視覚障害者用の点字版、聴覚障害者用の言語指導、知的障害者用の「☆本」があります。
検定教科書と文部科学省著作教科書以外の本は「一般図書」になります。
通常の学級では一斉授業なので一人だけ別の教科書を使うわけにはいきません。通常の学級の教科書は、1の「その学年の検定教科書」に決められており、2,3,4は使えません。ただし、視覚障害があるお子さんが通常の学級に在籍している場合には、以前に紹介した「教科用特定図書」という扱いで、点字・拡大版を検定教科書に替えて使用することができます。
☆本
特に興味深かったのは「☆本(星本)」。文部科学省お手製の、知的な障害があるお子さん専用の教科書です。学ぶ内容を学年ではなく小学校3段階・中学校2段階に分けて、1〜5個の☆の数で示しています。
特別支援学校用ですが、鎌倉市内の特別支援学級でも使われているそうです。
国語・算数(数学)・音楽・生活の4教科があります。この生活科は通常の小学校とは異なり、高学年の理科・社会・家庭科も合わせた科目です。来年度から中学の理科や社会も追加されるそうですが、残念ながらまだ見本がありませんでした。
☆本は知的障害独自の学習指導要領に合わせて作られていて、普通の教科書とは全く違う内容です。特別支援学校・学級でも知的障害がなかったり軽度のお子さんは、学年別の学習指導要領に基づいて学ぶので、☆本を使うことはできません。
☆1の国語は、ほとんど文字がない絵本ですね。☆1の算数は数字を使わずに「いち、に、たくさん」という表現で、透明シートで絵が変わるなど面白い作り。☆2,☆3になっても絵や写真が中心。中学生向けの☆4,☆5も漢字にはルビをふってあり読みやすい。どの教科も身近な題材を取り上げていて、そのまま学校生活や日常生活に役立ちそうでした。
附則9条本
特別支援学校・学級のお子さんで、☆本がない教科や、☆本でも合わない場合には教科書以外の一般図書を使用できます。学校教育法附則第9条で認められているので「附則9条本」と呼ばれます。
義務教育の教科書は無償なので、9条本を選んだ場合も1科目1冊ずつ国が買ってくれます。
今回の展示会では、神奈川県の教育委員会が選んだ500種類以上の本がほぼ集まっていました。「はらぺこあおむし」「三びきのやぎのがらがらどん」のような有名な絵本もあれば、言葉遊びや数の本、絵カード、問題集、レシピ本などなど。想定する教科も対象年齢も多種多様です。
教科書採択のスケジュール
5月の総合教育センターでの展示会が終わった後は、県内各地に分散して9条本が送られて、7月頃まで巡回して展示されます。それとは別に検定教科書の展示会も6-7月頃に行われ、一部の会場では☆本も展示されます。
特別支援学校・学級の先生方はセンターや他の展示会で本を手に取って、夏の間に来年度使う教科書を選び、8月末までに採択します。
新入生の場合、年が明けて様子がはっきりし出す2-3月頃、採択済みの教科書の中からその子に合いそうなものを担任の先生が選び、入学後に配布するそうです。
保護者の方へ
教科書を選ぶ際には保護者の意見も参考にされるとのこと。通常の学級の教科書は全員同じで4年ごとの採択ですからそうはいきません。一人ひとり違う特別支援教育ならではの話ですね。
この分野に力を入れてほしいとか、家にある本とダブらないようにとか。希望がすべて通るわけではありませんが相談してみましょう。教科書を検討し始める5月頃がオススメです。
☆本や9条本を実際に見てみたい場合は、教育委員会や特別支援学校・学級の先生に聞けば、展示会の日程を教えてもらえます。また、展示会の時期以外は全ての本がセンター5階にある学校支援室に置いてあるので、そこで見せてもらうこともできるそうです(要連絡)。
■神奈川県立総合教育センター
藤沢市善行7-1-1
0466-81-0188(代表)
検定教科書を原本とする点字版や拡大版、音声教材などについてはこちら。
投稿者:プー
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