今回のコンサートは東京・横浜と鎌倉で異なるプログラムだそうです。東京横浜ではタンゴとともにアメリカ人作曲家のガーシュインやバーンスタインの楽曲を取り上げ、「ニューヨークらしさ」を発信します。鎌倉での演奏は、タンゴ・ギタリストのアダム・タリー氏との共演。日本ではなかなか聞けないタンゴの曲目が並びます。真智子さんのタイトでスタイリッシュな演奏も、タリーさんの甘く切ないギターの音も、聴衆を仰天させたタップバイオリン(タップを踊りながらバイオリンを弾く小澤さん独自のパフォーマンス)も、はじけそうな予感がしてワクワクします。
あれはもう4年も前になるでしょうか。小澤真智子さんのコンサートの直前、彼女の婚約者でピアニストのオクタビオ・ブルネッティさんが病から急逝したと伺いました。オクタビオさんはアルゼンチン出身。同国NO1タンゴ・ピアニストでニューヨークに住み、演奏で世界中をまわっていました。気さくなお人柄と情熱的、圧倒的な演奏は知られており、小澤さんとの素晴らしい共演は私たちに深い深い印象を与えていました。2015年の日本公演は婚約発表になるね、と、楽しみにしていたものでした。
亡くなられたのはコンサートの前日。当日サントリーホールでは、オクタビオの写真(私が撮影した)を前に、真智子さん自身の讃美歌演奏と悲しい報告で幕を開けました。婚約発表が聞けるな、と思って来た聴衆の前で、彼女はオクタビオの編曲によるピアソラ(アルゼンチンの作曲家)の楽曲を弾き切り、思いをささげて、喝さいを受けました。それは小澤さんの素晴らしい演奏への称賛とオクタビオを悼む、悲しさの混じった拍手となりました。
それから数年間、彼女の周りでは、時間はゆっくり流れていました。一時ワシントンDCに居を移しましたが、またニューヨークに戻り、1年以上たってようやくコンサート活動も再開。日本でも演奏しています。オクタビオとのあれだけの圧倒的なタンゴのプログラム、情熱的で豊かなサウンドというわけにはいかないなか、共演者にも恵まれて、進化したスタイリッシュなパフォーマンスを見せて、私たちをホッとさせました。
2017年ソロアルバム「MACHIKO OZAWA MI OBLIVION」をニューヨークでリリース。タイトルにあるOBLIBIONはピアソラの人気の曲で「忘却」という意味です。「音楽は私の人生。オクタビオとの何かを残したい」との思いから作ったアルバムで、逆説的な言葉を選んだ小澤さん。強く、しなやかなサウンドに切なさがにじみます。昨夏にはこのアルバムが評価され、ジャズのライブハウスとして屈指のニューヨークブルーノートでの演奏も果たしました。CDよりはダウンロードが主流のアメリカで、先週このアルバムは全米ダウンロード数一位になったとの知らせも届きました。
ゆっくりと前を向いて動き出した小澤真智子さん。
鎌倉では、彼女とオクタビオとともにNYでタンゴを奏でた仲間であるギタリスト、アダム・タリー氏との再会・共演となります。曲目はタンゴ・タンゴ・タンゴ。「どっぷり」と熱い厚いパフォーマンスになりそうです。
投稿者:CanCan
◆小澤真智子コンサート 旅するヴァイオリン『南・北アメリカへ』
リーフレットはこちら(pdfファイル)≫
【南・北アメリカの旅】 小澤真智子(ヴァイオリン)、霜浦陽子(ピアノ)
NYを拠点として21年。ガーシュイン,バーンスタインからピアソラまで、南北アメリカを行き来して演奏する小澤の軌跡をプログラムで!4月21日(日)
横浜美術館 レクチャーホール
14:00 4,000円(全席自由)4月23日(木)
スタンウェイサロン東京・松尾ホール(2回公演)
14:00 4,000円(全席自由)
19:00 4,000円(全席自由)
【どっぷりと!タンゴの旅】 小澤真智子(ヴァイオリン)、アダム・タリー (ギター)
NYで5年間「インポルタンゴ」の共演仲間だった小澤とTully。今春、NYとアルゼンチンから来日し、鎌倉で5年ぶりの再会&共演!4月27日(土)
鎌倉芸術館 集会室
19:00 4,000円(全席自由)4月28日(日)
妙法寺(苔寺) 鎌倉市大町4-7-4
14:00 4,000円(全席自由)
チケット:MOミュージック(0467-44-1443)
イープラス https://eplus.jp/
プログラムはリーフレットをご参照ください。
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